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精子の凍結保存について

精子凍結保存とは?

採取していただいた生きた精子を保存液で処理し、-196℃の超低温(液体窒素)で保存する技術です。
治療ではこれを融解して使用します。

こんな時に利用できます

① 人工授精や体外受精(顕微授精)を行う予定で、当日にご主人の出張や単身赴任で新鮮な精子がすぐに使えない場合、 前もって凍結していた精子を融解して生きた精子を治療に使用することができます。
② 精子の数が少なかったり動きがよくない場合に、凍結を数回重ね、精子を蓄積します。
それをまとめて融解し、治療に使用します。
③ その他、精巣悪性腫瘍等の場合における精子の保存。
一度凍結された精子は液体窒素(-196℃)中で半永久的に保存できます。

●当院における2003年凍結融解精子を用いた人工授精の妊娠率は以下のとおりです。

凍結融解精子

周期あたり : 15.40%(4周期/25周期)
症例あたり : 25.0%(4人/16人)

新鮮精子

周期あたり : 17.34%(68周期/392周期)
症例あたり : 20.3%(68人/335人)

凍結による急激な温度変化に対する精子のダメージは避けられず、個人差はありますが融解後の精子の生存率は融解前の約50%~80%に低下します。
しかしながら、新鮮精子を用いた人工授精と比較しても、妊娠率において凍結による差は見られませんでした。

●凍結融解精子で生まれてくる児に問題はないか?

凍結融解精子を用いて生まれたお子様は、新鮮精子を用いて生まれたお子様と比べて、発育 状態に差が出たり、先天奇形などの異常の頻度が高くなるという報告はありません。
凍結保存精子によるヒト妊娠例は1953年から報告されており、比較的古くから行なわれている手技です。

今回は精子の凍結保存において皆さんが疑問や不安に思っていること、また精子凍結の有用性について説明致します。

精子凍結保存のメリットとデメリット メリット

ご主人の都合が悪くART施行当日に精液を採取出来ない。
場合に備えての事前の凍結保存。
精子所見不良例(乏精子症や精子無力症)では2~3回分をまとめて人工受精に使用することで濃度や運動率を上げることが出来る。
抗癌剤・放射線治療などで将来精子がダメージを受けることが予想される場合に備えての凍結保存。

デメリット

精子の運動率が低下する。
凍結→融解をすることにより精子の運動率(蘇生率)は一般的に元の運動率の50~80%に低下します。
これは主に精子尾部の断裂による前進運動の低下です。
しかし、運動率の低下を余儀なくされても蘇生した活発な精子を再度回収選別して治療に用いる為、結果としては差程の影響とはなりません。

※凍結保存による精子への遺伝子(DNAレベルでの)変化や胎児への影響の報告はなされておらず、ART治療成績に影響を及ぼすようなことはありません。

費用がかかる

凍結の費用は2万円です。
6ヵ月後に更新の手続きが必要です。その後 更新手続きには1年毎で3万円の更新料がかかります。

凍結精子の保存管理

液体窒素タンクは年間を通して温度・湿度の差が生じない専用の部屋で保管しています。
これは液体窒素の気発やタンクの劣化を防ぐためです。
凍結の効果が損なわれないためにタンク内の液体窒素の量を1日2回午前・午後とに異なるスタッフが確認しています。

取り違え防止

保管の記録管理については姓別・日付別と二冊の記録台帳を用意することにより、常に二重チェック。
凍結・融解の作業時には必ず2名のスタッフにより、作業の確認を二重に行なっています。
凍結・融解の作業は必ず1名様ずつ処理をします。2名同時に処理をいたしません。

凍結方法

精液の採取は院内採精または自宅採取による持参のどちらでも構いません。
精液の処理がスムーズにいくように37℃で10分間加温しサラサラの状態(液化)する。

3層Percoll法で遠心分離をすることにより、死精子や不純物(細胞・血球系)を除去し高比重である良質な精子のみを回収します。
凍結のダメージより精子を守る専用の凍結保存液と混和し、凍結保存チューブへ移す。
チューブを凍結専用ケーンにセットし、液体窒素の冷気(2~5℃)で冷却することにより精子へのダメージを軽減します。
-196℃の液体窒素で凍結された精子は理論上、半永久に保存が出来ます。
超純水を37℃に加温し、タンクより素早く取り出し融解します。