NEWS

2020年実績について

今回の通信は、最新の当院外来の実績をご報告いたします。
2020年(1月~12月)に当外来で妊娠された方は390名いらっしゃいました。

図1

 図1は2020年に当外来でどのような治療を受けて妊娠されたのかをまとめたものです。約30%の方が排卵誘発やタイミング法で妊娠されています。AIH(人工授精)の妊娠は23.1%、ART(体外受精、顕微授精、融解胚移植)による妊娠は44.4%となっています。このグラフを見てみると、妊娠数は全妊娠数のART 44.4%>タイミング 30.0%>AIH 23.1%でAIHの妊娠数が少なくなっていますが、タイミングなどで妊娠に至らなかった人がAIHに移行しているので、決して妊娠率が低いわけではありません。 また、ARTの妊娠率は子宮鏡や腹腔鏡手術(筋腫核出術など)により、着床環境を整えることで妊娠に至っている方も増えています。

AIH(人工授精)について

 AIH(人工授精)は排卵日に、ご主人の精液から良好運動精子を取り出し、子宮の中に注入する方法です。
比較的自然に近い妊娠であり、副作用の少ない治療です。原因不明の方、性交障害や軽度精子異常がある方が適応となります。妊娠率は下の図1のように、40歳を過ぎると39歳までの方に比べ約2分の1に低下しています。また、図2を見てみると人工授精は1~2回目の妊娠が多く、5回目以降は妊娠がないわけではありませんが少なくなります。5回以上AIHをして妊娠された方は、精子側に異常がある方が多いようです。一般的に4~5回AIHを行っても妊娠しない場合、精子に問題がなければ、それ以上行っても妊娠する確率はかなり低くなるので次のステップアップが必要となります。

図1

図2

ART(体外受精、顕微授精、融解胚移植)について

上の図を見てみると、どの年齢層においても当院の妊娠率は全国平均より高い妊娠率です。原因は分かりませんが、40歳以上の当院の妊娠率は全国平均の3倍高い値となっています。20代の妊娠率63.2%、30~34歳の妊娠率56.3%ととても高い値ですが、35歳以上になると36.5%と明らかに低くなっています。

“ARTの妊娠率から考えられること”
① AIH(上記)よりも明らかに妊娠率が高い。
② 34歳までのARTの妊娠率は、35歳以上の妊娠率より明らかに高いので、34歳までに
 ARTをした方が妊娠しやすい。
③ 35~39歳、40歳以上は移植あたりの妊娠率があまり変わりません。
 しかし、40歳以上では胚が育たないことも多く移植が出来ないことが多くなる。

結論
① ARTは、34歳までが妊娠率が高い。
②40歳以上でも胚盤胞まで胚が育てば、35~39歳と同様の確率で妊娠できる。