婦人科腹腔鏡下手術

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腹腔鏡下手術とは?

おへそに開けた約1cmの穴より腹腔鏡(内視鏡)をいれ、炭酸ガスをお腹にいれて、お腹を膨らませた状態にして腹腔内の手術をします。モニターに映し出された映像を見ながら、下腹部にさらに2~3か所小孔を開けお腹の中に鉗子という専用の器械を出し入れしながらお腹の中で手術操作を行なう手術です。創が小さいことが最大のメリットでここ10年ほどの間に急速に産婦人科手術の中心的方法として広まりました。術後の回復が早く、痛みも少なく、傷跡も目立たないのが特徴です。
子宮筋腫や卵巣嚢腫といった婦人科の病気は20代~40代の比較的若い女性に多くみられる病気ですが、多くの場合腹腔鏡下手術が可能です。女性にとって美容的に優れていることはいくつになっても、大切なことであると考えます。

腹腔鏡下手術の方法

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腹腔内の様子は大型モニターに映し出されるため、より詳しく観察することができ、手術操作を安全、確実に行うことができます。内視鏡下手術は今や特別な治療方法とは言えませんが、映像を見ながら鉗子を用いて手術操作をすることから非常に高度な技術を必要としますので、医師の経験が重要です。当院は日本産科婦人科学会が認定する認定研修施設(内視鏡技術認定医を育成する施設)であり、内視鏡技術認定医が手術に入りながら、より安全・安心な手術を提供できるように日々の努力を重ねています。

開腹手術と腹腔鏡下手術について

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開腹手術
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腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術のメリット

  • 患部を拡大して細部まで観察できる
  • お腹の中を直接触らないので術後癒着が少ない。腸の動きも回復が早い。
  • 傷が小さく痛みが少ない、また傷跡が目立たないので美容的に優れている
  • 入院期間が短く、早期社会復帰が可能、術後1〜4日目で退院できる

腹腔鏡下手術のデメリット

  • 適応症例に制限がある(大きさ、個数など)
  • 特殊な器具、器械を必要とするので 夜間の緊急に対応できない
  • 腹腔鏡特有の合併症がある(皮下気腫、コンパートメント症候群)
  • 高度な癒着などはお腹の中を腹腔鏡で見て初めて分かる場合があり、手術途中で開腹術へ変更となる可能性がある

腹腔鏡下手術可能な疾患

子宮筋腫

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一般的に症状がひどい場合、子宮がこぶし大以上の場合、不妊症・不育症の原因となっている可能性がある場合は治療が必要です。子宮を残したい場合には腹腔鏡下子宮筋腫核出術(筋腫のみを摘出する)を行います。
当院では筋腫の大きさは15cm程度まで、個数10個程度までを腹腔鏡下手術としています。それ以上の場合は開腹手術をおすすめしています。また再発を避けるため子宮を残すことを希望されない場合は腹腔鏡下子宮全摘術(筋腫を含め子宮ごと摘出する)をおすすめします。この場合、腹腔内操作で子宮を切除し、腟から子宮を取り出しその後、腹腔内操作で腟断端を縫合します。子宮を摘出すると月経がなくなりますが、卵巣が残って入ればホルモンバランスが崩れたりすることはありません。

子宮筋腫の症状
  • 過多月経 (月経時の出血多量)
  • 生理痛
  • 下腹痛
  • 頻尿
  • 便秘
  • 不妊症
  • 不育症 (流産を繰り返す)

子宮腺筋症

子宮内膜症が子宮筋層に入り込んで筋層が硬く肥大し、周囲に炎症をおこします。痛みや出血などの症状がお薬でよくならない場合や不妊症や不育症(流産を繰りかえす)の場合は手術がすすめられます。

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子宮筋腫と同様に子宮を残す場合(将来妊娠を望むとき)は腹腔鏡下子宮腺筋症切除術、子宮を残したくない場合(再発を防ぎたいとき)は腹腔鏡下子宮全摘術を行います。

卵巣良性腫瘍

腫瘍のみ摘出し、正常卵巣を残す腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術(①)と腫瘍を含め卵巣ごと摘出する腹腔鏡下付属器摘出術(②)があります。腫瘍の種類、大きさ、年齢、再発の確率、今後の妊娠希望有無等を考慮し、よく相談した上でどちらかの術式を選択します。

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① 腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術
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② 腹腔鏡下付属器摘出術
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異所性妊娠

妊娠している卵管を切除する術式(①)と卵管を切り開いて卵管に着床しているところだけを取り除いて縫合し卵管を残す術式(②)があります。緊急手術時もできる限り腹腔鏡下手術で対応しています。

① 卵管切除術
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② 卵管線状切開術
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不妊症

卵管造影検査で卵管、卵管采周囲に異常所見のある方、原因不明で長期不妊の方、子宮内膜症による腹腔内癒着が疑われる方に腹腔内を観察し、異常がないか調べます。
必要に応じて、癒着剥離術、卵管開口術、子宮内膜症病巣除去術、卵管通過性検査、腹腔内洗浄等を行います。直接腹腔内を触らないので開腹手術よりも術後の癒着が起こりにくいといわれ、不妊症患者さまの手術に適していると考えられています。術後の妊娠率は約50%です。

婦人科手術実績 (2019年)

当院では2019年度437件の婦人科手術をおこないました。その内、313件(71%)が内視鏡(腹腔鏡、子宮鏡)による手術でした。

内視鏡手術件数

腹腔鏡手術実績 (2016年1月~2019年12月)

腹腔鏡下子宮全摘術
73件
腹腔鏡下子宮筋腫核出術
170件
腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術+腹腔鏡下付属器切除術
364件
腹腔鏡下異所性(子宮外)妊娠手術
86件
腹腔鏡下卵管形成及びその他卵管手術
23件(2019年度)
腹腔鏡下子宮内膜症手術
286件

お問い合わせ

婦人科の腹腔鏡下手術は年々目覚ましく進歩しており、良性疾患はほとんどが腹腔鏡で行われるようになりました。また最近では、ロボット手術や婦人科悪性腫瘍の手術も腹腔鏡で行われるようになってきており、さらに鏡視下手術は発展することが期待されます。当院でも日々研鑽を積んでこれからも皆様に安全でより良い医療を提供していきたいと考えております。

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